ジャパン・クオータリー 2015 年第 2 四半期

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ジャパン・クオータリー 2015 年第 2 四半期
不動産リサーチレポート
ジャパン・クオータリー
2015 年第 2 四半期
2015 年 4 月
ドイツ証券株式会社
金融商品取引業者
関東財務局長(金商)第 117 号
(加入協会:日本証券業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会、一般社団法人
金融先物取引業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会)
本書面は、特定の商品やサービスの勧誘・提供を行う目的で作成されたものではありませ
ん。本書面に掲載されている投資手法や商品・サービスにつきましては、所定の手数料や
諸経費などをご負担いただく場合があります。また、各投資手法、商品・サービスには、
市場や経済動向もしくは価格の変動などにより、元本を割り込むなどの損失が生じるお
それがあります。商品・サービスの購入などにつきましては、説明書・目論見書などを良
くお読みいただいた上で、ご検討下さい。
本書面はドイツ証券株式会社の協力のもと Deutsche Asset & Wealth Management が作
成しており、日本国内ではドイツ証券株式会社がこれを配布しております。本書記載の
商品・サービスについては、日本国内ではドイツ証券株式会社がお問い合わせの窓口と
なりますので、ご質問などございましたらドイツ証券株式会社の担当者までご連絡願い
ます。
DEUTSCHE ASSET & WEALTH MANAGEMENT ジャパン・クオータリー 2015年第2四半期 | 2015年4月
目
小夫
(オブ) 孝一郎
次
まとめ .................................................................................................... 1
ディレクター
アジア太平洋リサーチヘッド
経済・金融・投資家動向 ......................................................................... 2
マクロ経済情勢 ......................................................................... 2
胡
敏軒(フー・ミンシェン)
アシスタント・ヴァイス・プレジデント
不動産投資市場・価格 .............................................................. 4
J-REIT ..................................................................................... 8
不動産ファンダメンタルズ ..................................................................... 10
オフィス ................................................................................... 10
商業施設 ................................................................................ 13
住 宅 ..................................................................................... 14
物流施設 ................................................................................ 15
特集:私募 REIT の国際比較と今後の可能性 .................................... 16
バックナンバー .................................................................................... 22
免責事項 ............................................................................................. 23
グローバル・リサーチ・チーム ............................................................... 24
DEUTSCHE ASSET & WEALTH MANAGEMENT ジャパン・クオータリー 2015年第2四半期 | 2015年4月
まとめ
第 1 章の「経済・金融・投資家動向」では国内マクロ経済動向や不動産投資市場、キャップレート、
投資リターンなどについて直近の動向と今後の見通しを分析している。2015 年第 1 四半期の実
質 GDP は前四半期比 0.7%増と回復過程に入っており、つれて株価も堅調に推移した。企業業
績の回復が雇用や賃金にも好影響を及ぼし始めていることから、2015 年第 2 四半期以降は個
人消費にも明るさが出てくるものと見込まれる。
良好な融資環境のもと 2015 年 3 月までの 12 ヶ月間の不動産取引額は約 4.5 兆円と高水準を
維持した。キャップレートの低下は大阪をはじめ地方都市にも波及してきており、もう一段の低下
の可能性がある。取得主の属性では国内系や外資ファンドの勢いが増す傾向にある一方、JREIT による取得も過去半年で全体の 4 割強を占め堅調であった。
第 2 章では、オフィス・商業施設・住宅・物流施設それぞれのセクターにおける市場ファンダメン
タルズの動向について短期予測も交えつつ概観している。東京都心のオフィスビル賃料は堅調
に上昇しているが、一方で新築ビルの空室消化には時間がかかるようになっている。大阪でも
新規供給により需給が一時的に緩んだほか、名古屋では年末に向けて大型供給が控えており
影響が懸念される。
訪日外国人によるインバウンド消費に支えられ、商業売上げは都市部を中心に回復がみられ、
都心の繁華街では募集賃料の大幅な引上げがみられた。物流施設の需給は引き続きタイトで、
東京、大阪いずれにおいても賃料上昇につながっている。住宅市場では都心部のタワーマンシ
ョンを中心に引き続き価格が高値圏で推移しているが、郊外では一次取得層の需要が戻ってお
らず、供給戸数は 5 四半期連続でわずかながらも前年割れとなった。今後都心部を中心に販売
戸数は持ち直すとみられる一方、郊外では引き続き苦戦が予想される。
第 3 章の特集では、私募 REIT が国内不動産市場へもたらす影響について、他の投資商品や
海外の類似ファンドと比較しながら分析した。今後アジア太平洋地域の不動産に対しては、オー
プンエンド商品を中心に欧米投資家からの投資ニーズが高まっていくものとみられる。もっともア
ジアでのオープンエンドファンドの商品数はごく限られており、アジア地域のなかで日本がオープ
ンエンドファンド市場を先導していく立場にあるといえる。私募 REIT が一層拡大・発展していくこ
とで国内市場の機関化の促進、市場の活性化や安定化、投資家や運用業者の育成、業界の成
熟化が期待できる。
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1
経済・金融・投資家動向
マクロ経済情勢
2015 年第 1 四半期の実質 GDP は、前年が増税前の駆込み需要期にあたったため前年比で
-1.2%の下落となっているが、前四半期との比較では 0.7%増と回復しており、株価も堅調に推
移した。企業業績の回復が雇用や賃金にも好影響を及ぼし始めていることから、2015 年第 2 四
半期以降は個人消費の回復が見込まれる。2015 年通年でみると実質 GDP は約 1%の成長率
になるものとみられる。
図表 1: 実質 GDP 成長率の推移
Q1
Q2
Q3
日経平均(前年同期比、右軸)
Q4
(前年同期比)
(年成長率、実質)
6%
60%
ドイツ証券予想
4%
40%
2%
20%
0%
0%
-2%
-20%
2014.04
-4%
-6%
-40%
消費増税
2011.03
東日本大震災
2000.12
ITバブル崩壊
1997.04 消費増税
1997.07 アジア通貨危機
-60%
2008.09
リーマンショック
-8%
-80%
2018F
2017F
2016F
2015E
2014
2013
2011
2012
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
-100%
1995
-10%
E:ドイツ証券推定値(文中全ての図表同様)、F:ドイツ証券予想値(文中全ての図表同様、詳細については末尾の免責事項を参照)
出典: 内閣府、Bloomberg、ドイツ証券の資料をもとに Deutsche Asset & Wealth Management 作成
日銀短観による 2015 年 3 月の業況判断指数 DI(国内大企業・全産業ベース、黄線)は 12 月
から 2 ポイント増の 16 と改善し、なかでも金融緩和の恩恵を受ける不動産業は特に好調だった。
個人消費の冷え込みも一段落していることから 2015 年 2 月の景気動向指数先行 CI(青線)は
105.3 と前期比 1.1 ポイント改善した。
図表 2: 景気動向指数(先行指数)と日銀短観
景気動向指数 先行CI (左軸)
(2010年=100)
日銀短観 大企業DI (右軸)
126
DI業況判断指数:
50
('良い' - '悪い', % ポイント) 先行き
113
25
100
0
-25
74
-50
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
87
出典: 日本銀行、内閣府の資料をもとに Deutsche Asset & Wealth Management 作成
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2
2014 年 10 月に GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用方針の見直しを決めて以
降、国家公務員共済組合連合会(KKR)や地方公務員共済組合連合会、日本私立学校振興・共
済事業団の 3 共済も GPIF との運用一元化に向け株式運用を増やしている。これらの公的マネ
ーが株式相場を押し上げる格好となっており、日経平均は 2015 年 4 月、約 15 年ぶりに 2 万円
台をつけた。一方、円相場は年初から 120 円前後でこう着しており、円安の進行は一旦小休止
となった。
図表 3: 日経平均と円相場
日経平均(左軸)
円相場(右軸)
¥20,000
¥120
¥15,000
¥100
¥10,000
¥80
2008.09
リーマンショック
2011.10
円相場史上最高値(75円台)
2015.04
2014.10
2014.04
2013.10
2013.04
2012.10
2012.04
2011.10
2011.04
2010.10
2010.04
2009.10
2009.04
2008.10
2008.04
2007.10
2007.04
2006.10
2006.04
2005.10
¥60
2005.04
¥5,000
出典: Bloomberg の資料をもとに Deutsche Asset & Wealth Management 作成
10 年物国債の利回りは 2015 年 4 月に 0.3-0.4%前後で推移しており、今後は 2016 年頃にか
けて 0.7%台へ緩やかに上昇するものと予想されている。消費者物価指数(コア CPI)は原油安
の影響を受けて軟調に推移しており、足元では実質ベースで 0%程度まで落ち込んだとみられ
る。今後は 2016 年後半に 1%程度まで上昇するとみられるが、日銀の目標である 2%には届か
ない可能性がある。
図表 4: 短期金利と消費者物価指数推移
無担保コール翌日物金利
(%)
消費者物価指数
10年国債
3
消費増税
影響含む
2
1
0
-1
ドイツ証券予想
-2
2018F
2017F
2016F
2015E
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
-3
E:ドイツ証券推定値、F:ドイツ証券予想値
出典: Bloomberg、ドイツ証券の資料をもとに Deutsche Asset & Wealth Management 作成
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3
不動産投資市場・価格
金融機関による不動産ファイナンスの状況は引き続き良好である。日銀短観によると金融機関
の不動産・大企業向け貸出態度 DI(黄線)は前期比 2 ポイント増の 27 と、2015 年 3 月まで 16
四半期連続でプラスとなった。不動産業の設備投資向け新規融資額も 2014 年 12 月は前年同
期比 20.1%増と 1 年ぶりに大幅に増加した。
図表 5: 不動産向け新規融資の増減と金融機関の貸出指標の推移
不動産業の設備投資向け新規融資増減 (前年同期比、左軸)
貸出態度DI 全産業・大企業 (右軸)
貸出態度DI 不動産・大企業 (右軸)
20%
20
0%
0
-20
-40%
-40
2008.03
2008.06
2008.09
2008.12
2009.03
2009.06
2009.09
2009.12
2010.03
2010.06
2010.09
2010.12
2011.03
2011.06
2011.09
2011.12
2012.03
2012.06
2012.09
2012.12
2013.03
2013.06
2013.09
2013.12
2014.03
2014.06
2014.09
2014.12
2015.03
-20%
出典: 日本銀行の資料をもとに Deutsche Asset & Wealth Management 作成
2015 年第 1 四半期は国内系や J-REIT に加えて、外資系ファンドなどによる物件売買が活況
だった。2015 年 3 月期までの 12 ヶ月間の不動産売買高は約 4.5 兆円と前年同期比ほぼ横ば
いとなり、引き続き取引水準は 7 年来の高いレンジにある。不動産向け融資環境は引き続き良
好ではあるものの不動産の利回りは下がってきているだけに、売買高は概ね横ばい程度で推移
するものとみられる。
図表 6: 収益不動産売買高と金融機関の不動産向け貸出指標の推移
売買高 (12ヶ月合計、左軸)
(兆円)
6ヶ月前の貸出態度DI(不動産-大企業)
36
5
24
4
12
3
0
2
-12
1
-24
0
-36
2000.09
2001.03
2001.09
2002.03
2002.09
2003.03
2003.09
2004.03
2004.09
2005.03
2005.09
2006.03
2006.09
2007.03
2007.09
2008.03
2008.09
2009.03
2009.09
2010.03
2010.09
2011.03
2011.09
2012.03
2012.09
2013.03
2013.09
2014.03
2014.09
2015.03E
2015.09F
6
E:ドイツ証券推定値
出典: 日本銀行、都市未来研究所、Real Capital Analytics のデータをもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
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4
図表 7 の左図はセクター別のキャップレートを示している。実勢価格を織り込んだ TMAX キャッ
プレートは 2014 年 12 月期に 4.88%と約 7 年ぶりの低水準となったほか、東京オフィスの鑑定
キャップレートも速報ベースで 3.71%と過去最低の水準となった。キャップレートの低下は地方
にも波及しており、大阪のオフィスでも前年同期比で 20bps ほど低下した。
一方、東京のオフィスビル実取引における平均イールド・スプレッド(国債金利とキャップレートの
差)は前期比 30bps ほど低下したものの依然として 410bps と世界的に高い水準を維持してお
り、スプレッドが 270-300bps 程度のニューヨークやロンドン、150bps 強の香港など他の都市と
は対照的となっている。
図表 7:鑑定キャップレートと世界主要市場のオフィス・イールドスプレッド
鑑定キャップレート
東京オフィス(鑑定)
東京マンション(鑑定)
TMAX(実勢ベース)
オフィス取引イールドスプレッド
大阪オフィス(鑑定)
大阪マンション(鑑定)
東京
香港
ニューヨーク
シンガポール
ロンドン
シドニー
6%
7.0%
速報値
6.0%
4%
5.5%
3%
5.0%
2%
4.5%
1%
4.0%
0%
3.5%
-1%
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
5%
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
6.5%
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 201415
注: データは将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
出典: 不動産証券化協会、Real Capital Analytics、TMAXのデータをもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
東証 REIT 指数はこれまでの上昇基調が一転し調整局面となっており、2015 年第 1 四半期は
前期比 2%減となった。東京都心部 A クラスビルの 2014 年 12 月の床単価1のインデックスは
730 万円/坪と前年同期比で約 12%の伸びとなり、REIT 指数の動きを 1 年遅れで追いかける
展開となっている。床単価は 2008 年のピーク時よりは 37%低い水準にあるだけに、現在の投
資環境などを鑑みれば今後一段の上昇が見込まれる。
図表 8: 不動産価格の推移
J-REIT指数 (左軸)
Aクラスビル坪単価 (右軸)
(万円/坪)
1,200
2,400
2008年9月
リーマンショック
800
800
400
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
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Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
1,600
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 201415
出典: 大和不動産鑑定、BloombergのデータをもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
1
賃貸可能床単価(NRA)ベース、物件価格をビルの賃貸可能床面積で割ったもの。
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5
直近の主な不動産取引は以下の通りで、J-REIT のみならず外資系ファンドやデベロッパーによ
る取引も目立った。最も高額だったのは中国 CIC による目黒雅叙園の取得(推定 1,400 億円)。
最も床単価の高かったオフィス取引はゴールドマン・サックスによるグラントウキョウ・サウスタワ
ー(東京駅前)の一部取得で推定 1 平米あたり 360 万円、商業施設だと今治造船による和光並
木館(銀座)の取得で推定で 1 平米あたり 380 万円とみられる。注目物件におけるキャップレー
トは東京で 3%以下、大阪でも本町、御堂筋や梅田地区で 4%以下の取引が見られた。
外資では米系以外にも中国系、マレーシア、シンガポールなどのアジア系の取引が活発で、取
引対象地域も東京から地方に拡大しつつある。また、訪日外国人の増加を背景に、2014 年の
ホテル取引件数は過去最高となった。
図表 9: 2015 年 1 月以降に取引・発表された主な国内不動産取引
種別
物件名称 ( 取得割合%)
目黒雅叙園
取得主
-
目黒
15年1月
-
中央
15年2月
東京建物
芝公園三丁目ビルなど計31物件
768
0.84
5.2%
東京ほか
15年1月
日本リート不動産投資法人
推460
推1.1
-
港
15年2月
グリーンオーク(米)
440
1.38
4.2%
東京ほか
15年4月
いちご不動産投資法人
推388
推3.6
推2.9%
千代田
15年3月
ゴールドマン・サックス(米)
汐留ビルディング、
梅田スクエアビルなど計4物件
大宮センタービルなど計4物件
日石横浜ビル
386
CIC(中)
1.49
4.0%
大阪
284
1.76
0.83
0.70
3.6%
4.0%
5.7%
東京
大阪ほか
埼玉ほか
15年3月
日本リート投資法人
245
0.34
4.9%
神奈川
15年3月
ジャパンエクセレント投資法人
プレミア投資法人
370
15年4月
積水ハウス・リート投資法人
15年3月
ジャパンリアルエステイト投資法人
220
0.54
5.4%
東京
15年1月
CROSS PLACE浜松町
推185
推1.5
-
港
15年4月
東急不動産
ウインズ浅草ビルなど計2棟
推170
0.69
-
台東
15年1月
ヒューリック
渋谷桜丘スクエア
170
1.96
3.0%
渋谷
15年2月
三菱商事
アークヒルズサウスタワーの25%など計2物件
169
0.74
3.7%
東京
15年4月
オリックス不動産投資法人
都内のオフィス3棟
155
-
-
東京
15年1月
ヒューリック
セントラルクリブ六本木など計2物件
148
0.83
4.6%
東京ほか
15年3月
オリックス不動産投資法人
コンセプト青山など計2物件
146
1.99
4.1%
渋谷
15年3月
大和証券オフィス投資法人
大阪国際ビルディング
130
推0.2
-
大阪
14年12月 三菱UFJリース
NMプラザ御堂筋
101
0.67
3.8%
大阪
15年3月
森トラスト総合リート投資法人
ORE心斎橋ビル
推100
0.43
-
大阪
15年3月
アンジェロ・ゴードン(米)
住友不動産上野ビル6号館
75
0.77
4.3%
台東
15年4月
MIDリート投資法人
銀座一丁目ビル
60
-
-
中央
14年10月 スタンダード・ライフ(英)
北品川森谷ビル
推45
0.57
-
品川
15年3月
フェニックス・プロパティ(香港)
-
-
-
愛知
15年3月
ラサール・インベストメント(米)
14年11月 ゴールドマン・サックス(米)
名古屋のオフィスビル2物件
K&S恵比寿ビルll
-
-
-
渋谷
353
0.16
5.1%
京都ほか
15年1月
イオンリート投資法人
池袋東急ハンズなど計2物件
推300
-
-
豊島
15年3月
ヒューリック
並木館
推250
推3.8
-
中央
15年2月
今治造船
171
0.35
-
千葉
15年3月
ゴールドマン・サックス(米)
イオンモールKYOTOなど計2物件
ザ・ブロックなど計3物件
ブルメールHAT神戸
110
0.22
5.3%
兵庫
15年3月
ケネディクス商業リート
中座くいだおれビル
100
1.21
-
大阪
15年2月
ダイナスティ・ホールディング(香港)
RUELLE青山の70%
推55
-
-
港
15年3月
ゴールドマン・サックス(米)
-
-
-
千葉
15年2月
ラサール・インベストメント(米)
大和ハウスリート投資法人
unimoちはら台
Dプロジェクト久喜lll-Vlなど計6物件
484
0.18
5.4%
埼玉ほか
15年3月
推430
0.20
-
神奈川
14年9月
三菱地所
首都圏の物流施設計5物件
140
-
-
埼玉ほか
15年2月
EPF(マレーシア)
日本通運北東京流通センター
108
0.26
5.4%
埼玉
15年3月
野村不動産マスターファンド投資法人
賃貸マンション11物件
236
0.80
4.9%
東京ほか
15年1月
ケネディクス・レジデンシャル投資法人
賃貸マンション12物件
235
0.58
4.8%
東京
15年2月
コンフォリア・レジデンシャル投資法人
賃貸マンション5物件
178
0.22
6.9%
東京ほか
15年4月
大和ハウス・レジデンシャル投資法人
賃貸マンション9物件
136
0.63
5.2%
東京
15年1月
アドバンス・レジデンス投資法人
インヴィンシブル投資法人
ロジポート相模原
全国のホテル3物件
リーガロイヤルホテル京都
老人ホーム3物件
オーシャンビュー湘南荒崎など老人ホーム5物件
133
-
5.3%
神奈川ほか
15年1月
推104
0.24
-
京都
15年2月
フォートレス(米)
30
-
-
愛知など
15年2月
フォートレス(米)
14年12月 パークウェイ・ライフ・リート(シンガポール)
77
1.71
6.9%
福岡など
推100
-
-
中央
15年1月
ファーストキャビン築地
20
-
-
中央
15年3月
新龍国際(香港)
豊洲の土地
301
2.74
-
江東
15年1月
大和ハウス工業
相鉄フレッサイン 銀座7丁目
開発用地
取引
年月
1.76
アーバンネット池袋ビルなど計3物件
ホテル/
ヘルスケア
場所
推0.9
本町ガーデンシティのオフィス及び店舗フロア
住宅
キャッフ ゚
レート
951
グラントウキョウサウスタワーの11.6%
物流
(百万円/㎡)
推1,400
いちご神宮前ビルなど計12物件
商業
単価
(億円)
東京スクエアガーデンの46%
青山ビル
オフィス
取得額
青山ベルコモンズの跡地
ヒューリック
推243
1.92
-
港
15年1月
三菱地所
横浜駅西口の土地
185
0.71
-
神奈川
15年3月
JR東日本
横浜・馬車道の土地
167
0.59
-
神奈川
15年1月
アパマンション
注: 取得主が黄色は J-REIT による取得、グレーは外資系による取得を示したものです。個別の物件や企業名はあくまでも参考として記載したもので、その企業の株
式や証券等の売買を推奨するものではありません。取得額は推定値を含みます。一部の取引は完了しておらず、優先交渉権が与えられただけのものも含みます。
出典: 日経不動産マーケット情報、各社公表資料をもとに Deutsche Asset & Wealth Management 作成
DEUTSCHE ASSET & WEALTH MANAGEMENT ジャパン・クオータリー 2015年第2四半期 | 2015年4月
6
2015 年 3 月末までの過去 12 ヶ月間の収益不動産取引額2を都市別にまとめると図の通りで、
東京の取引額は約 344 億ドルとドルベースで前年比ほぼ横ばいとなった。東京はニューヨーク、
ロンドンに次いで世界第 3 位となっており、アジア太平洋地域では依然として最大の取引額とな
った。この間 J-REIT による取得は約 35%、外資勢による取得は約 23%とみられる。大阪では
主軸のオフィスビルの取引がようやく回復しつつあるのに加え、商業施設、物流施設やホテルの
不動産取引は活況でアジア太平洋地域では北京、ソウルなどに次ぐ第 9 位となった。
図表 10: 世界の都市別収益不動産売買取引額ランキング (過去 12 ヶ月)
オフィス
商業施設
賃貸マンション
物流施設
ホテル
ニューヨーク
ロンドン
東 京
その他国内系
J-REIT
外資系
サンフランシスコ
ロサンゼルス
パリ
シカゴ
ワシントンDC
シドニー
香 港
メルボルン
上 海
シンガポール
北 京
ソウル
大 阪
台 北
広 州
~
~
0
10
20
30
40
50
(十億ドル)
60
注: 開発用地を除く
出典: Real Capital Analytics のデータをもとに Deutsche Asset & Wealth Management 作成
実物不動産インデックスによるトータルリターン3は 2009 年後半から上昇、2010 年からプラスで
推移しており、2014 年 11 月は前年同期比 1.4 ポイント増の年 7.4%(速報値、図表 11 左図)と
改善した。セクター別にみると回復が遅れていたオフィスのリターンも 2014 年 11 月は同 1.6 ポ
イント増の 6.0%、物流施設、商業施設、住宅等はいずれも同時期 7%-8%台で推移した。
図表 11: 実物不動産投資の年間トータルリターン推移 (レバレッジ前)
年間トータルリターン
トータルリターン
キャピタルリターン
インカムリターン
速報
オフィス
商業
住宅
物流
15%
10%
10%
5%
5%
0%
0%
-5%
-5%
-10%
-10%
速報
-15%
2004
2006
2008.06
2008.12
2009.06
2009.12
2010.06
2010.12
2011.06
2011.12
2012.06
2012.12
2013.06
2013.12
2014.06
2014.11
-15%
2004
2006
2008.06
2008.12
2009.06
2009.12
2010.06
2010.12
2011.06
2011.12
2012.06
2012.12
2013.06
2013.12
2014.06
1905.07
15%
セクター別総合リターン
注: データは将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
出典: MSCI Real Estate –IPD(左表)、不動産証券化協会(右表)のデータをもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
2
3
ここでは持ち家の取引や開発用地の売買は、キャッシュフローを生まない取引のため含めていない。
投資家が投資のベンチマークとして利用する収益指標で、賃料収入による運用利回りと鑑定評価に基づ
くキャピタル・ゲインを加えたレバレッジ前の収益率。「総合収益率」と同義。
DEUTSCHE ASSET & WEALTH MANAGEMENT ジャパン・クオータリー 2015年第2四半期 | 2015年4月
7
J-REIT
東証 REIT 指数は 2015 年 1 月に一時 2,000 ポイントをつけたものの、2 月には約 10%調整し、
足元では 1,900 ポイント台で推移している。平均利回りは 2.88%と 3%を切る水準にある。
2015 年第 1 四半期は米国や豪州など他国の REIT 指数も同様に軟調に推移した。
図表 12: REIT インデックス(短期推移と長期国際比較)
東証 REIT 指数と日経平均比較(5 年)
REIT 指数の国際比較(10 年)
J-REIT
A-REIT (豪州)
(円)
2,000
20,000
US-REIT
S-REIT (シンガポール)
400
1,800
18,000
1,600
16,000
350
300
J-REITインデックス (左軸)
1,400
14,000
1,200
12,000
250
200
150
日経平均 (右軸)
1,000
10,000
100
(2009年3月 = 100)
2015.03
2014.03
2013.03
2012.03
2011.03
2010.03
2009.03
2008.03
2005.03
2007.03
50
2015.04
2014.10
2014.04
2013.10
2013.04
2012.10
2012.04
2011.10
2011.04
2010.10
2010.04
8,000
2006.03
800
注: 参照インデックスは東証リート・インデックス、 FTSE NAREIT All Equity REITS Index (US-REIT), S&P/ASX 200 A-REIT Index (豪州REIT), FTSE ST REIT
Index (シンガポールREIT)
出典: Bloombergの資料をもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
2015 年 2 月の J-REIT 平均分配金利回りは前期比 9bps 低下の 3.04%(オフィス型 REIT に
限れば 2.80%)となった。この間長期金利も下落しているが、国債利回りとの差(スプレッド)は
269bps(オフィス型 REIT に限れば 245bps)と僅かに縮まった。分配金・配当スプレッドは米国
REIT、英国 REIT ともに 100-140bps 程度となっており、利回りで J-REIT の方が有利とみる投
資家もいる。
図表 13: J-REIT 分配金利回り
オフィスREIT
J-REIT
10年国債
8%
6%
4%
2%
スプレッド
2015.02
2014.02
2014.08
2013.02
2013.08
2012.02
2012.08
2011.02
2011.08
2010.02
2010.08
2009.02
2009.08
2008.02
2008.08
2007.02
2007.08
2006.02
2006.08
2005.02
2005.08
2004.02
2004.08
2003.02
2003.08
2002.02
2002.08
0%
出典: 三井住友トラスト基礎研究所、Bloombergの資料をもとに Deutsche Asset & Wealth Management作成
DEUTSCHE ASSET & WEALTH MANAGEMENT ジャパン・クオータリー 2015年第2四半期 | 2015年4月
8
J-REIT による資金調達も前年ほどの勢いはないが依然として活発で、2014 年 10 月-2015 年
3 月期の 6 ヶ月間で積水ハウスリートなど 5 銘柄の新規上場があったほか、日本リートなど 12
銘柄以上の公募増資が公表された。同期間の J-REIT による IPO・増資額が計 4,810 億円超、
物件取得額は計 9,545 億円超になったと見られる。2015 年 2 月にはケネディクス商業リートが
新規上場、3 月には J-REIT で 2 番目のヘルスケア銘柄であるヘルスケア&メディカル投資法
人が新規上場したことで J-REIT の上場銘柄数は過去最多の計 51 銘柄となった。
図表 14: J-REIT の資金調達と物件取得額
直近の主要増資一覧
(兆円)
(億円)
J- REIT 銘柄
1.0
投資法人債
第三者割当増資
公募増資
IPO
J-REIT物件取得額
(純増額)
時期
増資額
ジャパンリアルエステイト
2015年3月
大和ハウスリート
2015年3月
312
日本リート
2015年1月
507
その他増資合計
330
10-3月
2,145
合計
3,294
新規上場のREIT
0.5
J- REIT 銘柄
2001.09
2002.03
2002.09
2003.03
2003.09
2004.03
2004.09
2005.03
2005.09
2006.03
2006.09
2007.03
2007.09
2008.03
2008.09
2009.03
2009.09
2010.03
2010.09
2011.03
2011.09
2012.03
2012.09
2013.03
2013.09
2014.03
2014.09
2015.03
0.0
時期
増資額
ヘルスケア&メディカル
2015年3月
125
ケネディクス商業リート
2015年2月
577
積水ハウス・リート
2014年12月
668
トーセイ・リート
2014年11月
86
日本ヘルスケア
2014年11月
59
合計
1 ,5 1 5
上場予定のREIT :
新生銀行/ケネディクスなど6社(ヘルスケア)
サムティ(住宅)、リスト(総合)
注: 増資額は上限額。個別の物件や企業名はあくまでも参考として記載したもので、その企業の株式や証券等の売買を推奨するものではありません。
出典: 不動産証券化協会、Real Capital Analytics、各社公表資料をもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
図表 15 は国内収益不動産の取引額(自己居住用住宅などを除く)及び J-REIT の物件取得額・
売却額をそれぞれ示している。2014 年 10 月-2015 年 3 月期の 6 ヶ月間の不動産取引額は速
報ベースで約 2.4 兆円、このうち J-REIT の占める割合は推定 4 割強と前期から回復した。
図表 15: 収益不動産取引額の推移と J-REIT の取得割合
(兆円)
4
3
取得 その他法人
取得 J-REIT
売却 J-REIT
80%
全体の売買額に占める
J-REITの取得割合 (右軸)
60%
2
40%
1
20%
0
0%
-1
2000.09
2001.03
2001.09
2002.03
2002.09
2003.03
2003.09
2004.03
2004.09
2005.03
2005.09
2006.03
2006.09
2007.03
2007.09
2008.03
2008.09
2009.03
2009.09
2010.03
2010.09
2011.03
2011.09
2012.03
2012.09
2013.03
2013.09
2014.03
2014.09
2015.03
-20%
出典: 不動産証券化協会、都市未来研究所、Real Capital Analyticsの資料をもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
DEUTSCHE ASSET & WEALTH MANAGEMENT ジャパン・クオータリー 2015年第2四半期 | 2015年4月
9
不動産ファンダメンタルズ
オフィス
企業業績が回復してきたことで東京都心部におけるオフィス需要も強含んでおり、都心 5 区4の
オフィスビルの空室率は回復傾向にある。2015 年 3 月末時点の平均空室率は 5.3%と、前年
同月比 1.4 ポイント低下している。特に渋谷区の平均空室率は 3.5%と引き続き低い水準を維
持している。
一方、港区や中央区で新築ビルの供給が相次いだことから、竣工後 1 年以内の新築ビルに限
れば平均空室率は 30.4%と約 2 年ぶりの高い水準となった。竣工後、空室消化に時間がかか
るビルが複数出てきているだけに、全体の空室率も回復ペースがスローダウンしており、多少変
調の兆しが出ている。
図表 16: 都心 5 区の平均空室率と新築ビルの空室率の推移
新築ビルの空室率 (右軸)
11 %
32 %
9%
16 %
平均空室率(左軸)
主な竣工ビル一覧 (2014年以降)
ビル名
大崎ウィズタワー
室町古河三井ビル
室町ちばぎん三井ビル
京橋トラストタワー
横浜アイマークプレイス
大手町タワー
西新橋スクエア
虎ノ門ヒルズ森タワー
飯田橋グラン・ブルーム
日生丸の内ガーデンタワー
豊洲フォレシア
品川シーズンテラス
東京日本橋タワー
大崎ブライトタワー
大崎ブライトコア
二子玉川ライズ・タワーオフィス
鉄鋼ビルディング
大手町1-1計画A棟
階数
2014/1
2014/2
2014/2
2014/2
2014/3
2014/4
2014/4
2014/5
2014/6
2014/6
2014/7
2015/ 2
2015/ 4
24
22
17
21
14
38
22
52
30
22
16
32
35
58,411
62,470
29,120
52,471
97,400
198,000
55,373
244,360
124,000
55,800
101,376
128,000
133,900
31
20
30
26
22
92,000
44,800
86,900
117,000
108,000
2015/ 6
2015/10
2015/11
2015.03
2014
2016年以降
延床㎡
竣工
2015/ 5
2013
2012
2011
2010
2009
1%
2008
1%
2007
2%
2006
3%
2005
4%
2004
5%
2003
8%
2002
7%
(オフィス部)
ビル名
竣工
階数
大手町フィナンシャルシティ・グランキューブ
東京ガーデンテラス
新宿スカイフォレスト
JR新宿駅新南口ビル
六本木三丁目プロジェクト
銀座六丁目計画
京橋二丁目西地区再開発
大手町1-1計画B棟
赤坂一丁目再開発
浜松町二丁目計画A-3
〃 B棟
TGMM芝浦計画A棟
〃 B棟
虎ノ門四丁目プロジェクト
大手町二丁目再開発A棟
〃 B棟
渋谷駅 南街区
〃 道玄坂街区
〃 駅街区 東棟
〃 桜丘口再開発A棟
2016
2016
2016
2016
2016
2016
2016
2017
2017
31
36
37
33
40
13
32
29
37
42
26
31
36
40
35
33
33
18
46
36
2017
2017
2019
2018
2018
2018
2019
2020
2020
延床㎡
(オフィス部)
計205,000
110,000
54,000
111,000
202,500
147,900
119,500
147,000
175,000
計270,000
99,000
135,000
145,000
185,000
199,000
150,000
117,500
58,900
107,000
174,800
出典: 三鬼商事(上段)、三幸エステート、各社公表資料(下段)をもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
4
千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区を指す。
DEUTSCHE ASSET & WEALTH MANAGEMENT ジャパン・クオータリー 2015年第2四半期 | 2015年4月
10
2015 年 3 月の東京都心 3 区5の基準階面積別オフィス空室率もおおむね改善傾向にある。大
規模ビル(基準階面積 200 坪以上)の空室率が前年同期比 1.3 ポイント改善し 4.05%となった
ほか、基準階面積 50-100 坪クラスのビルで同 1.3 ポイント改善し 7.7%となった。これに伴い
2014 年 12 月のフリーレント平均付与月数も 3.1 ヶ月と前年同期比 0.7 ヶ月改善した。
図表 17: 東京都心 3 区の基準階面積別オフィス空室率の推移
15%
基準階 100~200坪のビル
平均
フリーレント月数(右軸) (ヶ月)
8
10%
6
5%
4
0%
2
-5%
0
1996.03
1996.09
1997.03
1997.09
1998.03
1998.09
1999.03
1999.09
2000.03
2000.09
2001.03
2001.09
2002.03
2002.09
2003.03
2003.09
2004.03
2004.09
2005.03
2005.09
2006.03
2006.09
2007.03
2007.09
2008.03
2008.09
2009.03
2009.09
2010.03
2010.09
2011.03
2011.09
2012.03
2012.09
2013.03
2013.09
2014.03
2014.09
2015.03
基準階 50~100坪のビル
基準階 200坪以上のビル
出典: ザイマックス不動産総合研究所、三幸エステートの資料をもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
過去のデータをみると東京都心のオフィスビルでは空室率と賃料上昇幅に相関(正確には逆相
関)関係がみられる。2015 年 3 月の都心 3 区の基準階 200 坪以上のオフィス空室率は 4.05%
と自然空室率の 5%を割っており、賃料交渉はオーナー側が有利な情勢になってきている。成約
賃料は 3 期の移動平均で前期比 0.4%増となっており、今後もう一段の回復が見込まれる。
図表 18: 東京都心 3 区のオフィス空室率と成約賃料の推移 (基準階 200 坪以上)
成約賃料増加率 (前期比、3期移動平均)
空室率 (右軸)
1%
8%
回復
4%
3%
0%
5%
-4%
7%
-8%
9%
2015.03
2014.03
2013.03
2012.03
2011.03
2010.03
2009.03
2008.03
2007.03
2006.03
2005.03
2004.03
2003.03
2002.03
2001.03
2000.03
1999.03
1998.03
1997.03
-12%
1996.03
:賃料が増加に転じた時点
11%
出典: ニッセイ基礎研究所、三幸エステートの資料をもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
5
千代田区、中央区、港区を指す。
DEUTSCHE ASSET & WEALTH MANAGEMENT ジャパン・クオータリー 2015年第2四半期 | 2015年4月
11
東京都心部のビルは引き続き賃料の上昇基調が続いており、2015 年第 1 四半期の基準階
100 坪以上のビルの募集賃料は前年同月比で 5.3%増と、前四半期よりも力強い回復がみられ
た。今後も全体ではしばらく回復基調が続くものと予想されるものの、新築ビルでは空室率の上
昇に伴って募集賃料が前年同月比で 6.2%減と弱含んでおり(図の黄色い線)、空室消化が遅
れる新築ビルでは賃料設定を上げられない状況にあるとみられる。
図表 19: 東京都心 5 区の基準階面積別オフィス募集賃料の推移
ドイツ証券予想
(円/坪/月)
50,000
プライム賃料、丸の内・大手町
基準階200坪以上
40,000
Aクラスビル
30,000
新築ビル
基準階100坪以上
20,000
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008.03
2008.06
2008.09
2008.12
2009.03
2009.06
2009.09
2009.12
2010.03
2010.06
2010.09
2010.12
2011.03
2011.06
2011.09
2011.12
2012.03
2012.06
2012.09
2012.12
2013.03
2013.06
2013.09
2013.12
2014.03
2014.06
2014.09
2014.12
2015.03
2015.12F
10,000
全クラス平均
基準階100坪以上
F:ドイツ証券予想値
出典: 三幸エステート、ニッセイ基礎研究所の資料をもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
国内主要都市のオフィス空室率も概ね改善傾向にあり、2015 年 3 月は 7-8%台に落ち着いて
いる。大阪の空室率も回復傾向にはあるものの、2015 年第 1 四半期には新ダイビル(堂島)な
どが竣工したため空室率は前期比 0.8 ポイントの悪化となった。2015 年後半には名古屋駅前
でもオフィスの大型供給が予定されていることから需給動向が一旦緩む可能性があり、今後の
先行きには懸念も出ている。
図表 20: 国内主要都市のオフィス空室率の推移
札幌
(%)
福岡
名古屋
大阪
東京
15
10
主な 竣工ビル一覧 (2013年以降)
ビル名
ダイビル本館(大阪・中之島)
グランフロント大阪 タワーA
グランフロント大阪 タワーB/C
富士フィルム名古屋ビル
NTT東日本仙台青葉通ビル
名古屋東京海上日動ビル
あべのハルカス(大阪)
札幌三井JPビル
竣工
階数
2013/2
2013/4
2013/4
2013/4
2013/5
2013/6
2014/3
2014/8
22
38
38/33
14
14
15
60
20
2015.03
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
0
1997
5
2015年以降
延床㎡
(オフィス部)
48,153
187,800
295,100
21,637
33,742
10,854
306,000
68,000
ビル名
新ダイビル(大阪)
大名古屋ビルヂング
JPタワー名古屋
JRゲートタワー(名古屋)
中之島フェスティバルタワー・ウエスト
グローバルゲート・ウエスト(名古屋)
グローバルゲート・イースト(名古屋)
梅田3丁目計画(大阪)
竣工
階数
2015/3
2015/10
2015/11
2017
2017
31
34
40
46
41
36
17
40
2017
2019
延床㎡
(オフィス部)
76,000
147,800
180,000
260,000
150,000
計157,000
217,000
出典: 三鬼商事(上段)、三幸エステート、各社公表資料(下段)をもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
DEUTSCHE ASSET & WEALTH MANAGEMENT ジャパン・クオータリー 2015年第2四半期 | 2015年4月
12
商業施設
訪日外国人による消費―いわゆるインバウンド消費―が増加していることで、ホテルや都心の
商業施設はいずれも売上げが大きく伸びている。2014 年第 4 四半期の賃料も各エリアで上昇
が鮮明となっており、1 階の店舗賃料は渋谷で 54%、銀座で 46%、大阪の心斎橋で 14%の大
幅上昇となった。円安効果に加え LCC(格安航空会社)の台頭やビザ発給要件の緩和に伴い外
国人旅行者数は月次ベースで記録更新が続いており、2015 年通年では一昨年から 5 割増の
1,500 万人以上になると予想されている。
図表 21: 東京都心と大阪の主要商業地の商業施設の平均募集賃料の推移
銀座
渋谷
(円/坪/月)
表参道
池袋
新宿
心斎橋(大阪)
70,000
50,000
30,000
Q4 2014
Q3 2014
Q2 2014
Q1 2014
Q4 2013
Q3 2013
Q2 2013
Q1 2013
Q4 2012
Q3 2012
Q2 2012
Q1 2012
Q4 2011
Q3 2011
Q2 2011
Q1 2011
Q4 2010
Q3 2010
Q2 2010
Q1 2010
Q4 2009
Q3 2009
Q2 2009
10,000
注: オフィス賃料は東京都心5区の基準階面積100坪以上の平均(図表17のベンチマーク)
出典: アトラクターズ・ラボ、日経不動産マーケット情報、三鬼商事の資料をもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
2015 年 1 月-2 月の小売売上高はチェーンストア(全国)が前年同期比 1.3%減だった一方、都
市部を中心に消費の回復がみられ、ショッピングセンター(政令指定都市)の売上高は同 1.1%
増、東京や大阪の百貨店では同 2.5%の増加となった。今後も訪日外国人の増加によるインバ
ウンド消費に加え、今年 4 月以降は増税前の駆込み需要の影響も統計上は解消されるだけに
売上の一層の回復が期待される。
図表 22: 形態別小売売上高の前年同期比推移 (%)
ショッピングセンター (13都市)
百貨店 (東/阪)
チェーンストア (全国)
10%
(全て既存店ベース)
5%
0%
-5%
2015.02
2014.12
2014.09
2014.06
2014.03
2013.12
2013.09
2013.06
2013.03
2012
2011
2010
2009
2008
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
2007
-11%
-10%
出典: 日本ショッピングセンター協会、日本百貨店協会、日本チェーンストア協会の資料をもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
DEUTSCHE ASSET & WEALTH MANAGEMENT ジャパン・クオータリー 2015年第2四半期 | 2015年4月
13
住宅
2015 年第 1 四半期の首都圏分譲マンションの平均販売価格は前年同期比 2.8%増の 5,197
万円と過去 20 年間の平均価格である 4,500 万円を約 15%上回っている。一方、増税の影響も
あり、供給戸数は前年同期比 4.2%減の 8,734 戸と 5 四半期連続で前年同期比割れとなった。
土地代や建材、労賃の高騰に加えてローン金利の低下や円安による海外投資家の増加もあっ
て都心部のマンション価格は高止まりしている。少なくとも今年いっぱいはこの傾向が続くとみら
れる一方、郊外部では引き続き販売の苦戦が予想される。
図表 23: 首都圏新築分譲マンションの平均価格と販売戸数増加率の推移
平均販売価格
(万円)
販売戸数増加率(前年同期比)
(%)
40%
4,500
0%
4,000
-40%
3,500
-80%
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
5,000
96 98 00 02 04 06
08
09
10
11
12
13
14 15
出典: 不動産経済研究所の資料をもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
東京 23 区の賃貸マンション市場では 2013 年後半より新規供給が増加しており、2015 年 1 月
は空室率が 11.0%と前年比 0.5 ポイント高まった。ただ分譲マンション価格が高騰しているだけ
に賃貸物件に需要が滲み出ており、2015 年 1 月の都心 5 区の募集賃料は前年同月比 3.7%
増と 17 ヶ月連続の上昇、23 区賃料指数も同 1.2%増と 19 ヶ月連続の上昇となった。
図表 24: 東京のマンション賃料と空室率の推移
(指数)
(円/坪)
23区賃料指数(左軸)
(%)
5区募集賃料(左軸)
11
112
15,500
109
15,000
10
106
14,500
9
103
14,000
8
100
13,500
7
2015.01
2014.10
2014.07
2014.04
2014.01
2013.10
2013.07
2013.04
2013.01
2012.10
2012.07
2012.04
2012.01
2011.10
2011.07
2011.04
2011.01
2010.10
2010.07
2010.04
2010.01
2009.09
2008.12
2008.03
2007.06
2006.09
2005.12
2005.03
23区空室率 (右軸)
出典: タス(データ提供アットホーム)<23区空室率>、リーシング・マネジメント・コンサルティング<5区募集賃料>、リクルートIPDジャパン<23区賃料指数>の資料をもと
にDeutsche Asset & Wealth Management作成
DEUTSCHE ASSET & WEALTH MANAGEMENT ジャパン・クオータリー 2015年第2四半期 | 2015年4月
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東京の高級賃貸マンションの空室率は 2015 年第 1 四半期は前期比 0.2 ポイント減の 7.3%と
引き続き改善している。直近月の募集賃料は前年同期比 7.6%増の月 1.57 万円/坪と、同 1.72
万円のオフィスビル賃料との差が縮まってきている。
図表 25: 東京都心 3 区における高級賃貸住宅賃料と空室率の推移
オフィス賃料
(円/坪、月)
高級賃貸住宅賃料
高級賃貸住宅空室率 (右軸)
(%)
22,000
11
19,000
9
16,000
7
13,000
5
10,000
3
2008.03
2008.06
2008.09
2008.12
2009.03
2009.06
2009.09
2009.12
2010.03
2010.06
2010.09
2010.12
2011.03
2011.06
2011.09
2011.12
2012.03
2012.06
2012.09
2012.12
2013.03
2013.06
2013.09
2013.12
2014.03
2014.06
2014.09
2014.12
2015.03
13
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
25,000
出典: ケン不動産投資顧問、三鬼商事の資料をもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
物流施設
3PL 業者の拡大やオンラインショッピングの普及もあり物流施設の需給環境は引き続きひっ迫
している。東京圏における 2014 年第 4 四半期の空室率は前期比 0.8 ポイント減の 3.4%、大阪
圏では供給が相次いだため前期比 1.6 ポイント増の 2.5%とやや上昇したものの依然として水
準は低い。平均賃料も堅調に推移しており東京圏で前年同期比 2.8%の上昇、大阪圏では同
8.7%の大幅な上昇となった。今年の後半以降は高水準な供給が予定されているため、空室率
は東京、大阪いずれにおいても一旦上昇するとみられるが、市況の大きな崩れはないものと予
想される。
図表 26: 賃貸物流施設の空室率及び募集賃料推移
マルチテナント型物流施設の空室率推移
東京圏
大阪圏
20%
大型物流施設の募集賃料推移
(円/坪、月)
4,800
予想
予想
15%
4,200
10%
3,600
5%
3,000
大阪圏 賃料
2,400
2008.03
2008.09
2009.06
2009.12
2010.06
2010.12
2011.06
2011.12
2012.06
2012.12
2013.06
2013.12
2014.06
2014.12
2015.06F
2016.06F
2008.03
2008.09
2009.06
2009.12
2010.06
2010.12
2011.06
2011.12
2012.06
2012.12
2013.06
2013.12
2014.06
2014.12
2015.06F
2016.06F
0%
東京圏 賃料
F:予想値(一五不動産)、注: 延床面積10,000m2以上のマルチテナント型賃貸物流施設、募集面積1,000m2以上の賃貸物流施設が調査対象
出典: 一五不動産情報サービスの資料をもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
DEUTSCHE ASSET & WEALTH MANAGEMENT ジャパン・クオータリー 2015年第2四半期 | 2015年4月
15
特集:私募 REIT の国際比較と今後の可能性
私募 REIT とは
私募 REIT6(または非上場オープンエンド型不動産投資法人)は 2010 年に国内第 1 号銘柄が運
用を開始し、現在 13 投資法人が運用を行っている。私募 REIT は投資法人の仕組みを利用して
不動産の運用を行うビークルで、米国やドイツの非上場オープンエンドファンドと似ているが、資
産規模や投資口の流動性では依然見劣りする。私募 REIT の特徴を上げれば大きく次の 4 点と
なる。

運用期間の設定がないため、従来の私募ファンドのように満期で物件を売り急ぐ必要
がない。このため安定運用が可能で、業界全体にとっても市場の安定化に寄与するも
のと考えられる。

厳しい条件付ではあるが償還が可能である 7(投資家にとって部分的に「出口リスク」
が緩和される)。

投資口価格は鑑定評価で決定されるため、投資家は株価の変動にさらされることがな
い。

運用利回りは私募ファンドより一般に低めであるものの、LTV 水準は 30-40%程度と低
めに抑えられ、安定運用を求める機関投資家のコア投資戦略に適している。
本章では私募 REIT が国内不動産市場へもたらす影響について、他の投資商品や海外の類似
ファンドと比較しつつ考察してみたい。まず、図 27 は私募 REIT と各種不動産ファンドの特徴を
国別に取りまとめたものである。市場規模と投資口の流動性(換金性)を除けぼ、ほとんどの項
目で米国のオープンエンドファンドに類似している。
図表 27: 私募 REIT と各種不動産ファンドの特徴
日本
米国
ドイツ
私募ファンド
(クローズドエンド型)
J- REIT
(上場REIT)
私募REIT
(オープンエンド型)
私募オープン
エンドファンド
公募オープン
エンドファンド
主な投資家
機関投資家
個人/機関
投資家
機関投資家
機関投資家
個人
流動性(換金性)
通常なし
あり
あり
あり
ボラティリティ
低
高
低
低
低
期間(平均)
5-7年
なし
なし
なし
なし
リターン
中-高
中
中
中
低-中
分配金利回り(過去平均)
非開示
4%
4% - 5%
5%
2% - 4%
レバレッジ(平均)
50-70%
50%
30-40%
20-30%
30% 以下
ディスクロージャー
低-中
高
高
高
高
主な投資対象国
各国
日本
日本
米国
欧州/グローバル
市場規模(AuM)
1,180億ドル
1,050億ドル
80億ドル
1,300億ドル
970億ドル
インデックス
-
東証REIT指数
専用インデックス
はない**
ODCE (NCREIF)
OFIX (IPD)
あり
(厳しい条件付*)
*償還の各種条件については注7を参照。 **ARESの出すAJFIは私募REITのデータも一部に含む。
出典:Deutsche Asset & Wealth Management作成
6
7
海外では一般にオープンエンドファンドと呼ばれているが、本稿では日本の慣例に習い私募 REIT とする。
規模が小さいこともあり償還については厳しい条件が設けられている。例えば償還は半期ごとに総資産
の計 2.5%までに制限したり、短期の償還には最大で基準価額の 5%の手数料を課すファンドも多い。
DEUTSCHE ASSET & WEALTH MANAGEMENT ジャパン・クオータリー 2015年第2四半期 | 2015年4月
16
私募 REIT は出口リスクや株価のボラティリティを抑えつつ、利回りを高めたい投資家のニーズ
を取り込める数少ない商品となっている。このため 2010 年に運用を開始して以来、国内の機関
投資家、特に地方銀行8や年金基金などを中心に投資資金を集めている。足元で 10 年国債の
利回りが 0.4%程度まで低下しており、目標配当利回りが 4%以上に設定されている同商品の魅力
は際立っている。
私募 REIT の総資産規模は 2015 年 4 月時点で 1 兆円を超えている。現在 13 投資法人が運用
中であり、2017 年までにさらに 5 法人が運用開始を予定している。私募 REIT の多くは三井不動
産や三菱地所など大手デベロッパーがスポンサーとなっている点は上場 REIT と同じ構図で、
2012 年 8 月にはゴールドマンサックス・アセットマネジメントが外資系として初の私募 REIT を立
ち上げた。三井住友トラスト基礎研究所の予測によると私募 REIT の総資産規模は 2018 年末ま
でに 2.5 兆円に達するとみられている。
図表 28: 私募 REIT の資産規模の推移
(千億円)
計画
(大和ハウス工業)
(NTT都市開発)
20
SMTRI予想
(東京建物)
(センコー)
(京阪電鉄)
15
SGAM(佐川急便)
日土地プライベート
SCリアルティプライベート(住友商事)
東京海上プライベート
10
丸紅プライベート
ケネディクス・プライベート
ブローディア(東急不動産)
大和証券レジ・プライベート
5
DREAMプライベート(三菱商事)
ジャパン・プライベート(ゴールドマン)
三井不動産プライベート
日本オープンエンド(三菱地所)
2018.04
2017.10
2017.04
2016.10
2016.04
2015.10
2015.04
2014.10
2014.04
2013.10
2013.07
2013.04
2012.10
2012.09
2012.03
2011.03
2010.11
0
野村不動産プライベート
注:個別の物件や企業名はあくまでも参考として記載したもので、その企業の株式や証券等の売買を推奨するものではありません。
出典: 三井住友トラスト基礎研究所の資料をもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
私募 REIT とは対照的に運用期間のある私募ファンド(クローズドエンドファンド)の人気はやや
低調な傾向が続いている。不動産私募ファンドの総資産規模は 2009 年 6 月の 17.7 兆円から
2014 年 12 月には 15.1 兆円へと減少している。リーマンショック後はファンドのデフォルトもみら
れただけに、期中の換金を基本的に認めていない私募ファンドを敬遠する投資家も多くみられる。
不動産証券化率と市場の「機関化」
DTZ によると、日本における収益不動産の資産規模は 2014 年時点で計 1.1 兆ドル(約 130 兆
円)となっている。そのうち REIT やファンドなどいわゆる証券化商品が保有する割合(証券化率)
は約 20%となっており、私募 REIT は全体の 1%にも満たない。残りの部分については大手デベロ
ッパーや電鉄会社、非上場企業などによって保有されている。日本市場はこの証券化率が低い
ため市場の「機関化」が進んでいないともみられており、実際米国市場(証券化率 42%)やドイツ
市場(同 27%)と比べると見劣りしている。
国内私募 REIT の総資産額は米国のオープンエンドファンドの合計額の約 16 分の 1 でしかなく、
ドイツと比べても約 12 分の 1 程度の規模となっている。先にみた通り私募 REIT の商品特性に
は投資家に魅力的な利点も多く、国内市場の機関化が今後更に進んでいくことを考えれば、私
募 REIT のさらなる成長が見込まれる。
8
私募 REIT による分配金は業務純益とみなすことができることも地銀に人気の理由の一つである。
DEUTSCHE ASSET & WEALTH MANAGEMENT ジャパン・クオータリー 2015年第2四半期 | 2015年4月
17
図表 29: 日米独の不動産の証券化率の比較
証券化率
日本
20%
私募REIT 8
REIT
105
日本の
投資不動産
1,134
公募・私募REIT及び私募ファンドによる保
私募ファンド
118
有資産の総額は、日本の投資用不動産ス
トックの約20%にあたる。42%の米国や
27%のドイツと比べると日本において市場
上場デベロッパー
169
(単位:十億ドル)
の機関化が進んでいないともいえる。
その他・未上場デベロッパーなど
734
米国
証券化率
42%
証券化率
ドイツ
オープンエンド
(公募)97
REIT
1,092
その他
2,018
アメリカの
投資不動産
3,617
(単位:十億ドル)
27%
REIT 4
その他
359
ドイツの
投資不動産
619
スペシャル
ファンド* 58
私募ファンド 6
(単位:十億ドル)
オープンエンド 130
上場不動産
会社 96
私募ファンド
279
上場不動産会社 98
*スペシャルファンド: 機関投資家向けオープンエンドファンド
出典: 不動産証券化協会、三井住友トラスト基礎研究所、DTZ、NCREIF、BVI、KTH、Bloombergの資料をもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
不動産保有比率
図 30 は各国の収益不動産の合計に対する上場 REIT、私募 REIT、デベロッパーなどの保有割
合を示している。イギリスを除くと各国とも不動産保有はいずれかのカテゴリーに偏っており、歴
史的背景や法制度の違いなどその国の特徴がよく現れている。アジアの国々、例えば香港やシ
ンガポールでは上場デベロッパーの比率が極めて高い。米国、カナダ、豪州などの英語圏では
上場 REIT の割合が高くデベロッパーの保有は限定的となっている。日本市場は従来デベロッ
パーの割合が高いためアジア型であったが、上場 REIT や私募 REIT の拡大で徐々に欧米型へ
の転換が進んでいく過程にあると見ることもでき、市場の機関化が進みつつある。
図表 30: 各国のファンド・デベロッパーなどによる不動産の保有比率
158%
上場REIT
96%
私募REIT/オープンエンドファンド
デベロッパー・上場不動産会社
60%
40%
20%
フランス
日本
豪州
ドイツ*
米国
英国
カナダ
シンガポール*
香港*
0%
*香港やシンガポールのデベロッパーや上場REITは、中国や東南アジアをはじめ海外資産の割合が著しく高いため比率が上ぶれている。同様にドイツのオープンエ
ンドファンドもヨーロッパ諸国をはじめ、半数以上の資産はドイツ国外におけるものである。
出典: 不動産証券化協会、三井住友トラスト基礎研究所、DTZ、NCREIF、BVI、Bloombergの資料をもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
DEUTSCHE ASSET & WEALTH MANAGEMENT ジャパン・クオータリー 2015年第2四半期 | 2015年4月
18
各国における不動産ファンド投資の利回り
各国の私募 REIT や私募ファンドは根拠となる法制度や運用基準がそれぞれ異なり、償還制限
や現金留保条件、LTV 水準、投資家の属性なども様々である。細かな違いを無視して各国の私
募不動産投資の利回りを比較すると図表 31 の通りで、米国及び日本が 5%台と高く、ドイツでは
利回りがやや低めとなっている。不動産キャップレートが低いイギリスの利回りは対象国で最も
低くなっている。
図表 31:各国の私募不動産ファンドの利回り
日本
英国
米国
ドイツ
8%
6%
4%
2007.12
2008.03
2008.06
2008.09
2008.12
2009.03
2009.06
2009.09
2009.12
2010.03
2010.06
2010.09
2010.12
2011.03
2011.06
2011.09
2011.12
2012.03
2012.06
2012.09
2012.12
2013.03
2013.06
2013.09
2013.12
2014.03
2014.06
2014.09
2014.12
2%
出典: 不動産証券化協会、NCREIF、 MSCI Real Estate –IPDの資料をもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
リスク・リターン
図 32 は実物不動産投資の過去 13 年の超過リターン9及びボラティリティ(いずれもレバレッジ前)
を示しており、日本の不動産は何れもちょうど米国とドイツの中間にある。日本の実物不動産市
場は国際的にみてもリスク調整後リターンで良好なパフォーマンスを達成しているといえる。
図表 32: 国別の私募不動産のリスク・リターン
超過リターン(現地通貨ベース)
7%
フランス
6%
韓国
米国
豪州
5%
4%
日本
英国
3%
2%
スぺイン
イタリア
1%
ドイツ
0%
0%
2%
4%
6%
8%
10%
12%
ボラティリティ
注: データは将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
出典: MSCI Real Estate –IPDの資料をもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
アジア全体に視点を広げ、不動産と他のアセットクラスと比較しても不動産投資は良好なパフォ
ーマンスを達成している。図 33 は 2006-2013 年のレバレッジ後の各アセットクラスのリスク調整
9
リスクフリーレート(各国の 10 年国債金利)を上回るリターン。
DEUTSCHE ASSET & WEALTH MANAGEMENT ジャパン・クオータリー 2015年第2四半期 | 2015年4月
19
後リターンを示しており、債券を除くとアジアの不動産ファンドは最もボラティリティが低く、リター
ンもこの期間でみれば比較的高かったといえる。もっともアジア全体をカバーする不動産オープ
ンエンド商品はほとんど普及しておらず、市場の機関化・成熟化はまだ途上にあるといえる。
図表 33: アジアにおける投資商品別リスク・リターン
12%
グローバル・
不動産
超過リターン(現地通貨ベース)
10%
アジア・不動産ファンド
8%
アジア・
上場不動産
グローバル・株式
アジア・債券
6%
アジア・REIT
4%
2%
0%
0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
35%
40%
ボラティリティ
注: データは将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
出典: アジア不動産ファンド: ANREV, アジア債券: JP Morgan Asia Credit Index, グローバル株式: MSCI World, アジアREIT: FTSE EPRA/NAREIT, グローバル不動産:
FTSE EPRA/NAREIT Global, アジア上場不動産: FTSE EPRA/NAREIT Asia Non-REITs の資料をもとにDeutsche Asset & Wealth Management作成
まとめ
私募 REIT に 10 年先行した J-REIT の運用資産総額は 2015 年 4 月時点で 12 兆円を超えてお
り、運用開始から 13 年間の間に大きく成長してきた。これと同様に私募 REIT も今後大きく成長
していく可能性を秘めており、足元の金利低下でこの傾向が一層促進されるものとみられる。
アジア地域全体に目を広げると、不動産の世界におけるオープンエンドファンドはいまだ発展途
上の段階にある。今後アジア太平洋地域の不動産に対する投資需要は益々高まっていくとみら
れ、オープンエンド商品への投資ニーズも徐々に高まっていくものとみられる。もっともアジアで
のオープンエンドファンドの商品数はごく限られており、このため日本はアジアのオープンエンド
ファンド市場を実質先導していく役割を担っているといえる。
私募 REIT は今後一層の拡大が期待されるが、商品やスキームには以下の通り留意点も指摘さ
れている。
10

投資口の償還については厳しい制限がある(前述脚注 7 参照)。償還請求が殺到す
ると予想される不動産不況期には全く換金ができないような事態も想定される。

パイプライン物件をスポンサー企業から購入する際は物件価格を巡ってスポンサー企
業との間に利益相反問題をはらむ10。

スポンサー企業が複数のファンド(J-REIT や他のファンド)を運用している場合、利益
相反を起こす可能性があり、厳格なガバナンスの強化が求められる。

国内私募 REIT のインデックスはいまだ存在しない。実物不動産のインデックスやファ
ンドのインデックスは徐々に整備が進んできているものの欧米市場ほど確立されたも
のとはなっていない。

各ファンドの規模が相対的に小さいため、公的年金などが求める巨額の投資ニーズ
には現状対応できていない。
この点は J-REIT と同じ懸念である。シンガポールなどアジア太平洋地域でも同じようなスキームが一
般的でこれらの国にも共通した懸念といえる。
DEUTSCHE ASSET & WEALTH MANAGEMENT ジャパン・クオータリー 2015年第2四半期 | 2015年4月
20

「アジアファンド」のような地域全体をカバーするオープンエンドファンドは日本にはなく、
アジア全体でもまだ少ない。私募 REIT は現状日本の投資家限定で物件も国内限定
となるなど、海外投資家のニーズには対応できていない。
何れにしても私募 REIT は安定運用を基本とするコア投資家のニーズに対応できる商品といえ、
これがより拡大・発展していくことで国内市場の機関化の促進、市場の活性化や安定化、投資家
や運用業者の育成、業界の成熟化が期待できる。
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バックナンバー
版
Vol
1
特集のテ ー マ
発行年月
第2四半期
08年6月
賃料データの謎を読み解く
第3四半期
08年9月
クレジット・クランチ
3
第4四半期
08年12月
復活するか、J-REIT市場
4
第1四半期
09年3月
東京の魅力度を測る
第2四半期
09年7月
日本の住宅市場
6
第3四半期
09年10月
歴史は繰り返す?「2003年問題」当時と現在の比較
7
第4四半期
10年1月
ビルの価格指標に「取引単価」を
8
第1四半期
10年4月
なぜ不動産投資が必要か(ポートフォリオ理論からの説明)
第2四半期
10年7月
安全志向が強い国内投資家と資本市場
10
第3四半期
10年10月
四半期アップデート
11
第4四半期
11年1月
拡大するクロスボーダー取引と取り残される日本
12
第1四半期
11年4月
東日本大震災と日本の不動産市場への影響
第2四半期
11年7月
地価データの本当の使い方
14
第3四半期
11年10月
四半期アップデート
15
第1四半期
12年1月
J-REITの今後の10年
第2四半期
12年4月
四半期アップデート
17
第3四半期
12年7月
四半期アップデート
18
第4四半期
12年10月
内向き志向の強い日本の不動産市場
19
第1四半期
13年1月
住宅ローン減税は需要を喚起できるか?
第2四半期
13年4月
四半期アップデート
21
第3四半期
13年7月
急速に変革が進むアジア太平洋地域の物流不動産
22
第4四半期
13年10月
四半期アップデート
23
第1四半期
14年1月
クロスボーダー投資と日本市場の課題
第2四半期
14年4月
四半期アップデート
25
第3四半期
14年7月
四半期アップデート
26
第4四半期
14年10月
四半期アップデート
第1四半期
15年1月
四半期アップデート
第2四半期
15年4月
私募REITの国際比較と今後の可能性
2
2008年
5
2009年
9
2010年
13
2011年
16
2012年
20
2013年
24
2014年
27
2015年
28
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22
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